

「Webデザイン」という言葉を聞くと、どのようなイメージをお持ちでしょうか?
もしかしたら、「Web上の見た目を整える仕事」という認識をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私も以前はそのように認識していました。
私はもともとグラフィックデザインを中心にデザインを学んでいたため、Webデザインも同じく特定の媒体における情報伝達、視覚的な訴求力の向上が主な目的のデザインだと考えていました。
しかし、実際にWebに携わり、Webデザインを深く理解していくにつれて、そのような目的だけではなく、グラフィックデザインとは異なる点が多くあることに気づかされました。
そして同時に、サービスや企業などの印象や、使いやすさ、目的達成のための導線など、Webデザインは企業やサービスを魅力を伝える上でとても大きな影響力を持っていると、あらためて実感しました。
そこで今回は、グラフィックデザインを学んできた上で感じる「Webデザインの特徴や特性」を、グラフィックデザインとの違いや共通点、Webデザインの目的や重要な要素などを通してご紹介します。
「Webデザイン」とはWebサイトの見た目を整えるだけではないということをお伝えできればと思います。
Webデザインとは、Webサイトを構成する情報を視覚的にデザインすることはもちろん、使いやすさや適切な情報への誘導を設計し、Webサイトの目的達成へとユーザーを導くためのデザインです。
単に見た目を美しくするだけでなく、ユーザーが快適にWebサイトを利用できるよう、情報設計、UI、UXなどの要素も総合的にデザインします。
例えるなら、Webデザインは「動きのある建築デザイン」、グラフィックデザインは「一枚で心を掴む絵画」。
Webデザイナーは、ユーザーがWebサイトという「空間」を快適に移動し、目的を達成できるよう設計するのに対し、グラフィックデザイナーは、一枚の「絵」の中にメッセージや魅力を凝縮させるイメージです。
このように、Webデザインは情報伝達や視覚的な訴求力の向上だけでなく、情報構造、操作性、そしてユーザー体験全体を設計する、インタラクティブな領域のデザインだと言えます。
Webデザインとグラフィックデザインは、最終的なアウトプットが異なるため、デザインを作成するプロセスや考慮すべき点に違いが多く存在しますが、根底には共通するデザインの原則も存在します。
グラフィックデザインは基本的に「見るもの」ですが、Webは「触るもの」です。
例えば、ボタンの配置ひとつでも、押しやすさや目立ち方でユーザーの行動が変わります。
どこに何があるのか、どうすれば次のページに進めるのか、ユーザーにとって迷わない設計が求められます。
グラフィックデザインでは、ターゲットとする媒体のサイズに合わせたデザインですが、Webサイトは様々なデバイスや画面サイズで閲覧されるため、Webデザインでは異なる画面サイズに適応させるレスポンシブデザインが必須です。
要素の配置やサイズが、画面幅に応じて柔軟に変化するように設計する必要があります。
個人的にはこの対応がWebデザインの難しいところでもあり、うまく利用することでターゲットに合わせた表現も可能となるWebデザインの利点にもなり得る、重要なカギだと感じています。
また、日々進化するデバイスやブラウザに対応する必要があり、永遠に探求できる奥深い部分でもあります。
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グラフィックデザインでは、物理的な制約(印刷物の材質、インクの色数など)はありますが、Web技術のような複雑な制約は少ないですが、Webデザインは、HTML、CSS、JavaScriptといったWeb技術の制約を受けます。
表現したいデザインが技術的に実現可能かどうか、表示スピード・SEOへの影響などのパフォーマンスに影響はないかなどを考慮する必要があります。
一見、Webデザインはアニメーション表現や動画の設置などができ自由な表現ができそうなイメージですが、パフォーマンスやレスポンシブなどを考慮するとアイデアに制限があり、想定していたデザインが表現できないことがあります。
しかし、その制限の中で自由で新しいデザインを組み立てることが個人的には楽しく魅力に感じる部分でもあります。
グラフィックデザインでも情報の整理は重要ですが、Webサイトは多くの情報を含むため、ユーザーが目的の情報に自然にたどり着けるよう、情報の構造化とナビゲーションのデザインが重要になります。
グラフィックデザインは静的な表現がもちろんですが、Webデザインでは、アニメーションやトランジションなどの動的な表現で、ユーザーの注意を引きつけたり、操作への反応を与えたりすることができます。動的な表現Webの魅力のひとつです。
例えば、ボタンをクリックできることを動きで示したり、スクロールできることをアニメーションで知らせたりすることで、ユーザーにアクションを促すことができます。
逆に考えると、こうした誘導ができていないとユーザーを適切に導くことができず、目的の達成を妨げてしまう可能性があるにで、Webデザインでは重要な要素だと言えます。
どちらのデザインにおいても、重要な情報を目立たせ、情報の優先順位を視覚的に伝えるための階層構造の設計は重要です。
フォントのサイズや色、配置を工夫することで、ユーザーの視線の流れを効果的にコントロールすることができます。
どのような順番で文字を読ませたいか、何に注目してほしいかを意識しながら、ユーザーの視線を導くようにデザインすることで、情報の訴求力を高めることが可能になります。
見せたい順番に目線を誘導することがポイントです。
デザインにおいて、色は感情やメッセージを伝える強力な武器です。
ブランドイメージやコンテンツの雰囲気に合わせた適切な色の選択は、Webデザインとグラフィックデザインどちらにもとても重要になります。
読みやすさなもちろん、デザインの意図に合ったフォントの選択と配置は、情報伝達と視覚的な印象を大きく左右します。
タイポグラフィは、伝えたい思いや感情を表現でき、その後のアクションにも影響が出るなど、どちらのデザインにおいてもデザインにおいて大切な役割を持っています。
タイポグラフィはデザインの「表情」づくりに欠かせません。
【関連記事】フォントで変わるデザインの印象
要素をどのように配置し、画面や紙面を構成するかは、視覚的なバランスや情報の伝わりやすさに影響します。
黄金比やグリッドシステムなどのデザイン原則は、どちらのデザインにも応用できます。
構成や余白の使い方など、バランス感覚はどちらにも共通する基礎スキルです。
ブランドイメージを確立し、ユーザーに安心感を与えるためには、Webサイト全体や印刷物全体で、フォント、色、スタイルなどの視覚的な一貫性を保つことが重要です。
世界観を統一して見せることは、どちらのデザインにおいても意識すべきポイントです。
どのようなユーザーに情報を届けたいのか、どのような印象を与えたいのかを理解することは、効果的なデザインを作成するための出発点です。
Webデザインとグラフィックデザインに共した基本的な考え方の一つです。
前述のとおり、WebデザインはWebデザインの特性だけではなく、自体の原則も考慮する必要があると言えます。
効果的なWebデザインは、以下のような要素がバランスよく組み合わさって成り立っています。
Webデザインの最も重要な目的は、以下のような目標達成を、視覚と体験でサポートすることです。
【Webデザインがサポートできること】
成果につながるWebサイトには、ユーザー目線での「使いやすさ」「わかりやすさ」「快適さ」が求められます。
ここまで含めて設計されたWebサイトは、ユーザー体験を向上させ、最終的な成果にも直結します。
Webデザインは、ただWebサイトの見た目を整えるだけではありません。「どんなふうに見せれば魅力が伝わるか」「どうすれば迷わず目的を果たしてもらえるか」など、ユーザーの立場や考えを考慮しながら、全体を設計していくことが大切です。
そして、Webデザインは企業やサービスの第一印象をつくる重要な役割も担っています。色、文字、構成、動きなどその一つひとつが、企業の想いや価値を確かに届けます。
たとえば、迷わず目的の情報にたどり着ける導線や、思わずクリックしたくなるボタンの配置、読みやすさを考えた余白の取り方など、Webデザインには、ユーザーが自然に行動を起こせるような仕掛けが詰まっています。
こうした一つひとつの工夫が、企業やサービスの魅力をより伝わりやすくし、ビジネスの成長を支える強い味方になり、それこそがWebデザインの大きな魅力なのだと、実感しています。
まだまだ学ぶことはたくさんありますが、これからも、伝わりやすさや使いやすさを大切にしながら、企業やサービスの魅力をしっかりと伝えられるWebデザインを目指して成長していきたいです。