皆さんは、
という言葉を知っていますか?
日本ではまだあまり定着していない言葉・概念ですが、海外の広告デザイン業界では非常に問題視されています。
これは、支払いが未確定な仕事、タダ働きの可能性が濃厚な仕事という意味で、特にデザインコンペに対してよく使われる言葉です。
つまり、
という類のクライアントからの要求です。
私はウェブデザイナーをしているので、この言葉とその意味を知った時、「そうそう!わかる!」と非常に納得した覚えがあります。
私たちのようなウェブデザインのお仕事以外の様々な業種の方々も、このような状況を経験したことがあるかもしれませんが、特にデザインなどクリエイティブな業種で多い現実なのです。
例えば会社のロゴやウェブサイトの制作を、コンペというかたちで多くの参加者を募り実際にデザインをさせて、その中から最も気に入ったものを選び、そのデザイナーまたは制作会社のみに報酬を支払います。こうすることで依頼一件分の予算でたくさんのアイデアを集めることができるわけです。
一見合理的で正しいように見えますが、ここにはたくさんの落とし穴があるのです。
例えば、お腹が減っている人が、複数のシェフに料理を作ってもらい、一番満足する料理を作ってくれたシェフにだけお金を払い、他の人たちには一切支払いはしない、というようなものです。
つまり参加者全員(選ばれた一人以外)にタダ働きをさせていることが問題なのです。デザインだとあまり気付かないかもしれませんが、他の業種に置き換えると分かりやすいですね。
ではなぜ「タダ働き」がよくないのか。
依頼主側からすると、「コンペで安価にたくさんのアイデアを集めることがどうしてだめなのか、参加は自由だろう」と思われるかもしれません。
けれどもこの考えは
になりかねません!つまり、、
本当に依頼主のニーズに合ったデザインや商品は、依頼主と制作側(デザイナー)との綿密なコミュニケーションから生まれます。しかしコンペでは、参加者全員と綿密な打ち合わせや信頼関係を築くことが難しく、基本的に大まかな項目のみの情報交換に限られます。
そのせいで、制作側はある程度予測の範囲でデザインせざるを得ず、これは依頼主の意図に応えられているか分かりませんし、依頼主も制作側の意図やコンセプトを汲み取れません。審査は「好み」に大きく左右されがちになり、こうなるとランダムに選ぶのとあまり変わりません。
上記の「審査は好みに左右される」現実を考えると、作品の質により多少は当選確率が上下するとはいえ、選ばれるのは基本的に運任せになるといえます。こうなると必然的に良い作品が作られる可能性、選ばれる可能性が共に下がります。
また、アイデアがたくさん集められるからといって、すべてがいいアイデアとは限りませんし、オリジナルであるとも限りません。それに、期待値が低いことから、制作側は基本的にタダ働きになる前提で作業することになります。よってコンペは参加作品の質を全体的に下げてしまうといえます。
つまり
ということですね…!
だからこそ信頼できる「プロ」に仕事を依頼することが推奨されています。ウェブサイトを見るなり、人づてに紹介してもらうなり、デザイン年鑑などを見て気に入ったデザイナーを見つけるなり、選定する方法はいくらでもあります。アイデアの数が欲しければ、ニーズをちゃんと理解する能力のある一人の人間、一つの会社からでも十分な数を引き出すことができるのです。
アウラもクライアントの皆さんに信頼して選んでいただける一社になっていくべく、そして私自身もそのようなデザイナーを目指すべく日々励んでおります♪
そしてこんなことがありました。
カナダの広告代理店がそんな業界のスペックワークについてNOを掲げ、5年前から提案依頼書の8割を断るという英断を行ったそうです。当初は社員・クライアント含め、非常に混乱したそうですが、その結果、この5年間一度もスペックワークを行わず成長を遂げてきたとのことです。
そしてこの会社が一風変わった映像を制作しているのでご紹介します♪これを観ればデザイン業界の「スペックワーク」がいかに問題視されているかが理解できると思います。なかなか面白く、考えさせられる内容なので是非皆さんもご覧ください!