みなさんこんにちは!
世界を旅する、アウラ海外特派員ウェブデザイナーの松本です。カナダのバンクーバーを拠点として世界中のアート・ビジネス・食・エンターテイメント・レジャーなど、様々な海外情報を発信してまいります。
さて、カナダをはじめ北米では環境問題について議論することが多く、ゴミの分別の細分化やベジタリアンの増加など、日本ではまだあまり馴染みのない取り組みや文化をたくさん目にすることができます。
日本を含むアジアは、環境問題に関しては教育や社会活動においてかなり遅れを取っているようで、私も恥ずかしながら今まで地球環境についてあまり深刻に考えたことはありませんでした。
ということでついにここバンクーバーで環境問題の勉強をスタートし、日々驚くべき事実や地球環境の現状を学んでいます。
ところで私はウェブデザイナー。
生物学者でも環境問題研究者でもありません。
しかしどんな職業であっても地球環境の改善に貢献できるチャンスや可能性があると思い、世界中の様々な事例をリサーチしたところ、「ソーシャルデザイン」という概念を知る事ができました。
ソーシャルデザインとは、モノの見た目などのデザインだけではなく、どのような社会を築いていくかという計画のことを言います。社会や環境をより良くするための制度から生活基盤の整備、人の行動や意識に至るまで、非常に幅が広い概念です。
みなさんは「デザイン」と聞くと、ウェブサイトやパンフレットなどの広告をはじめ、ビルや家、車、ファッションといった「モノ」「商品」を思い浮かべるかもしれませんが、デザイナーになって思うのは、デザインの仕事はファッションや流行を追いかけるようなものだけではなく、それ以上の可能性・責任があるということです。
デザイナーになった当初は、いかにカッコいいデザインを作るのか、流行のデザインを作るのかなど、見た目のデザインにばかり捕われていましたが最近は考えが変わってきました。
例えば人材採用のためのリクルートサイト。
もちろんウェブサイトの見た目のデザインもしますが、それ以上に重要なのは、お客様がどんな人材を求めているのか、そして求職者はその企業で何を学びたいのか。そういったバックグラウンドを読み取ってその情報を効果的に発信することや、リクルートサイトを作ることによって雇用主の企業側の採用に対する意識改革をいかに手助けするかなど、「モノ」のデザイン以上に情報発信方法のデザイン、人の意識・行動のデザインも、デザイナーに課せられた仕事のひとつだと感じるようになりました。
そんな中で、モノの売り上げやお金を設けるためだけのデザインではなく、社会や環境をより良いものにするような「ソーシャルデザイン」を知り、デザイナーもその技術やクリエイティビティを駆使して社会貢献できるんだと嬉しくなっている今日このごろです。
ではどんなソーシャルデザインが世界にはあるのでしょうか??
いくつかご紹介します!
デンマークは最も環境問題に敏感な国の一つで、国民はみな小さな頃から学校や家庭で環境問題を学ぶ機会が多く、地球環境を守るソーシャルデザインをいたるところで目にすることができます。
ちなみにデンマークは、国連が毎年発表している幸福度ランキングで常に上位に位置し、2016年には1位に輝いた最も“幸せな”国でもあります。
ではデンマークの街はどのようにデザイン・設計されているのでしょうか。
駅などといった街中の建物は昔ながらの煉瓦造りが多く、新しい技術や流行を過剰に追いかけることなく古いものを最大限に活用しようとしている国の姿勢を見ることができます。
例えば駅にはなんと切符を入れる改札機がありません。
日本では大きな駅にはいくつもの改札口があり、毎日多くの人が切符や定期券などをピーピーとかざしていますよね。
もちろんデンマークにも切符を購入する機械はあります。
しかしそれをチェックする機械がないのです。
そうなると、切符を買わずに無賃乗車する人がいるのでは?
もちろんいるでしょう。
けれどもデンマークでは「無賃乗車をするような人はいないはず」という性善説に則ったシステムデザインをしているのです。
「不信」に基づいた社会デザイン、つまり無賃乗車客を排除するために多くのマテリアルとコストをかけて改札機を作り、その改良やメンテナンスの度に大量の資源を費やしゴミを増やし地球環境を悪化させるよりも、デンマークは国民を信頼し、地球に優しい社会デザインを追求しているのかもしれません。
そして駅中の売店や自販機には当たり前のようにフェアトレードやオーガニックの商品が並んでいます。
このようなソーシャルデザインは、デンマークで暮らす人々がなぜ最も“幸せな”国なのかを示しているような気がしました。
日本のデザイナーもどんどんソーシャルデザインへの意識が高くなってきて、モノだけではなく社会をよりよくするためにあらゆるデザインを生み出しています。
例えば人の行動のデザイン。
大阪のある地域で都市公園を拡張する計画があり、そのプロジェクトに参加したデザイナーは、公園のデザインを設計する前に、地域の老若男女を集めたミーティングを企画・開催しました。
このアイデアもソーシャルデザインの一つです。
そのミーティングでは、デザイナーが市民に「どんな公園にしたいか」「新しい空間で何をしたいか」などのテーマを投げかけ、皆で話し合ってもらった結果、より良い公園デザイン作りのためだけでなく、地元の自然や産業に対して住民からより興味や好奇心を引き出す効果を生みだしたと言います。
いまこの公園では地元のオーガニック野菜などの売買が盛んにおこなわれ、地元住民が多く集まり、食や地球環境のあり方について学べる場になっているそうです。
このようにデザイナーは、ただ見た目のデザインをするだけではなく、その後の影響や効果を考え幅広い意味でのデザインを考える必要があり、またそうすることで「デザイン」の可能性を広げてひいては私たちが住むこの地球を守るような活動に繋げることもできることを考えると、私もウェブデザイナーとして「ソーシャルデザイン」を意識した仕事をしていきたいと思うようになりました。
デンマークの例を見ても、社会の構造やあり方には、その国で暮らす人たちの雰囲気や価値観、生きることに対しての美意識が色濃く反映されているような気がします。つまりソーシャルデザインは、個々に無関係のものではなく、私たちひとりひとりの意志、意識レベルの現れでもあると言えます。
私もデザイナーとしてデザインの技術やセンスだけではなく、お客様を、国を、地球を、より幸せなかたちに導けるような意識や倫理観を学び続けたいと思います。