こんにちは、アウラの広報部です。
大阪も、緊急事態宣言が解除されようとしています。街に活気が戻ってくるのが、楽しみでもあり、不安でもあります。
皆さまは、いかがお過ごしでしょうか。
本来であれば、今年、オリンピックが開催されるはずでしたね。
そのオリンピックで使用される「スポーツピクトグラム」って、ご存知ですか?お聞きになられたことがある方も多いかもしれません。
今回は、「スポーツピクトグラム」と、「デザイン表現」や「動き」にフォーカスを当てたブログを執筆いたしました。
ぜひ、ご覧いただければと思います。
公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック組織委員会(東京2020組織委員会)は、東京2020オリンピックで使用されるスポーツピクトグラムを発表しました。
外部リンク:The Tokyo 2020 Kinetic Sports Pictograms
日本では1964年に、東京大会で史上初めてスポーツピクトグラムが生み出され、1987年にデザイナー・太田幸夫の作品「非常口のピクトグラム」が国際標準化機構(ISO)に組み込まれました。
ピクトグラムが強いデザイン力を持つのは間違いありません。それに加え、現在発表されているピクトグラムは、いままでのデザイン表現の形式を革新し「動き」を新たに加えています。
情報化時代は、今日に至るまで継続しています。
前回のオリンピック(2016年)開催年には、世界中のインターネットユーザー人口が30億人を突破していました。つまり、今の時代はメディアで発表されたものが世界中の大勢の人に見られるということです。
これまでのデザイン表現形式の発展をみると、「情報の取得方法がデザインの表現形式を変化させる」のは、間違いありません。
インターネットが普及する以前は、限られた場所、限られた機会でのみ広告や情報を閲覧・取得することができました。駅前のパネル、雑誌の広告などが主な例です。
購読者数が多い雑誌ならば、広告掲載主も大きな利益を得る可能性があります。逆に、掲載する広告が失敗だった場合、大きな掲載コストのみが掛かり、損益の重圧がのしかかります。
限られた掲載枠の中で、アピールしたい情報を最大限に目立たせるよう工夫するのが当時の広告理念であると同時に、デザインの表現形式が限定的でした。
21世紀からは、情報通信技術が飛躍的に発展していきました。
その中で、「FLASH動画 (gif動画)」が広告業界でよく使われるようになりました。
なぜなら、インターネットがまだ普及していない黎明期、当時のインターネット回線の通信スピードは10k/1 秒だったので、ビデオ広告を導入したとしても、閲覧者は延々とローディング画面を眺める羽目になるということになります。
そこで当時の対策として、ビデオの代わりとなるデータ量の軽いFLASHによる動画広告を採用しました。
結果的に、FLASHがサイトシステムに柔軟に対応でき、どのページでもスムーズな閲覧を可能としたため、光ファイバーが普及するまではFLASH動画が情報ポータルのメイン手段として使われていました。
その頃のFLASH動画が、動的なデザインの原形ともいわれます。
光ファイバーの普及後は、FLASH動画が次第に使われなくなっていきました。早い通信環境では、ビデオ動画の方が気に入られます。また、FLASH動画はデータ量の軽さが魅力ですが、低解像度であるというデメリットもあるため、その後はほとんど淘汰されていきました。
近年、ソフトウェアと通信技術の発展と共に、デザインの表現形式の革新が絶えず行われています。
今までは、「2次元」での表現のためにグラフィックデザインが使用されました。メディアデザインは「2次元」と「3次元」の両方で構築されています。FLASHとグラフィックデザインはほぼ平行線のような関係です。
一方、動的なピクトグラムは、この2つの形式が「交わった」ような存在です。
この次元の限界を打ち被る表現形式こそが、次の時代のデザインともいえます。
今回のオリンピックで使用される動的なスポーツピクトグラムは確かに注目を集めていますが、しかし今回が初デビューというわけではありません。
世界中で、動的なデザインを活用したものが、日常的なところでも見ることができます。
動的なデザインのタイプは、主に3種類に分けられます。
まず一つめは、動きに基づいた2Dのピクトグラムです。このピクトグラムは、実質まだ2Dですが、「変化」を一環としてずっと存在します。つまり、同じロゴが時間が進むごとに別々の動きをしながらループします。(例:2000年ドイツのハノーファーの万博会のロゴ)
二つめは、動画ピクトグラムです。作り方や表示、伝統的な映像の撮影方法はほとんど同じです。動画本体より、画面全体(バックグラウンドなど)と連動するためのピクトグラムです。
アニメーションのオープニング、ゲームのオープニングなど、通信ソフトのスタンプでよく使われます。「LINE」の絵文字もこの種類です。
三つめは、本体を構築するピクトグラムです。ひとつの完全なアニメーションで構成されており、すべての動きはピクトグラム本体を表現するためであり、さらに画面(バックグラウンドのみ)を消したとしても、独立したアニメとして閲覧者に伝えることができます。
今後開催を控えている東京オリンピックのスポーツピクトグラムがこの種類です。
デザイン業界では、“Less-is-More (少ない方がより多くを得られる)”という理念が昔から使わ
れています。
言い換えると、デザインはシンプルな方が良い、という意味です。
2011年にMicrosoft社によるデザイン言語「Metro」とWindows 8の発表をはじめ、2013年にApple社のトップページがフラットデザインを採用し、一般的となりました。
情報通信の業界だけではなく、ファッション業界でもBurberry(バーバリー)やCELINE(セリーヌ)などブランドのロゴがシンプルになっています。
一方で、ビジュアルデザインが何十年という発展をたどり、作り方も完成形にまで達しました。これにより、従来のルールに従うと、洗練されたものにも関わらず「同質化」になるのも避けられません。
つまり、どれだけデザインが良くても、それほど注目を集められず、人々に印象を残せません。そのため、いかにシンプルさとのバランスを保ちながら、デザインの発する情報が豊かになるかが製作者の課題となりますが、今の時代に見れば、動的なデザインがひとつの良い選択肢になるかと思います。
なぜそう思うのか?こちらについても、理由を3点挙げます。
一つ目は、心理学者のWalter Benjamin氏の「ショック経験」という学説があります。
その内容というのが、「触覚的な楽しみによって習慣化された散漫な意識ではなく、習慣化された意識を空間的に破壊する」というものです。
ちなみに動的なビジュアルデザインという表現形式をみると、既存の2Dグラフィックの文字や図面などの情報をとる以外に、「動き」によってもっと想像的な空間を表現でき、非動的のデザインよりももっと強く印象を残せます。
二つ目は、フラットデザインはシンプルですが、仮に今度のオリンピックのスポーツピクトグラムのように既存のグラフィックデザイン以外にもシンプルな動きを付加すれば、実際の効果は絶対に「1+1=2」ではなく、シンプルかつブランディングを最大限的に広げることができます。
三つめは、会社として、自社の製品とロゴの組み合わせを何度も見直していったほうがいい、という私の考えです。しかし、製品とロゴの機能性が違う(製品の改良とは違い、ロゴがブランドの印象を表すため、逆にコロコロと変えないほうがいい)ので、この考えは相応しくないかもしれません。そこで、動的なロゴを使えば、ロゴが会社のブランディングを守りつつ、かつ製品の改良にも柔軟に合わせることが可能になる、というのが私の考えです。
次の時代のデザインの表現形式を、楽しみましょう!